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静嘉堂文庫美術館で「雲峰・文晁・閑林~齋田家ゆかりの南画」のハガキ大のチラシを見つけた。そのヴィジュアルは、谷文晁模写「佐竹本三十六歌仙絵巻」上巻より小大君である。これは行かねばと心に決めた。
まずは、お目当ての谷文晁模写「佐竹本三十六歌仙絵巻」のケースへ。 大正8年12月20日の益田鈍翁たち当時の数奇者の悪名高い分割によって、現在はバラバラの断簡となって各所に分蔵されているこの絵巻上下2巻の模写、それも名だたる谷文晁の絵で見ることができる機会は貴重である。 丁寧な説明パネルによると、藤原真実絵・後京極良経書のいわゆる「佐竹本」は、江戸時代末期に佐竹家に移る前には下鴨神社にあったとのことである。すなわち、谷文晁たちが写した時には、まだ「下鴨神社本」だったのかもしれないのである。 今までにみた断簡は大分退色が進んできていたが、こちらは鮮やかな色彩で、のびやかな明忠の書も読みやすい。虫食いまでも正確に写されているとのことだったが、最近制作された作品のように保存状態が良いと思った。 開かれていた「谷文晁模写本」は、上巻の後半で、下巻と違って錯簡はないとのことである。 順序は、9.源公忠、10.斎宮女御、11.源宗于、12.藤原敏行、13.藤原清正、14.藤原輿風、15.坂上是則、16.小大君、17.大中臣能宣、18.平兼盛の8首8人。この他に、軸装の佐竹本複製《9.源公忠》が出ていたが、多少汚れがあった。 このうち、絵としては斎宮女御が圧倒的にゴージャスで、籤で坊主を引いた鈍翁が裏工作してこの斎宮女御を手に入れたのも分からないではない。館内は撮影禁止なので、↓は佐竹本《斎宮女御》の参考図像。 その歌は、「琴のねに峯の松風かようらし いずれの緒よりしらべそめけむ」、「音はどちらから奏でているのであろうか」という意味である。 マイ・セカンドベストはチラシやポスターに使われている「小大君」。やはり女性の絵はカラフルで美しい。衣の文様も良く見える。そして、何よりも細く流れる黒髪が魅惑的である。歌は「岩橋の夜の契りも絶えぬべし 明くるわびしき葛城の神」。 その他に、東京国立博物館本館の特集陳列「浮世絵と歌仙絵」で、住吉明神・小野小町・壬生忠峯・藤原興風の4断簡とその江戸時代・中山養福の模本を見ている(ブログ記事はこちら、HP記事はこちら)。 館内のパネルによると、分割時の田中親美模本(100部)のほか、田中訥言本、土屋秀禾木版本があるという。 このブログのタイトルが三十六歌仙になってしまったが、齋田家の住宅で調度品として使われていた大岡雲峰の画が沢山出ていた。大岡雲峰は、鈴木芙蓉(谷文晁門下)高弟の南画家。広重が師の豊広の没した後に、この大岡雲峰から南画を学んだとも云われている。 中央のケースには、《鯉図》、《梅図》、《木瓜に小禽図》の横長の掛軸。 側面の《風炉先屏風》の画は、もともとは天袋に使われていたものらしく、翡翠などの鳥が描かれている沈南蘋風の画である。 《深山楼閣図》は、遠景は従来画法だが、近景には洋画の影響がありそう。 《山水唐人図》のテーマは、東晋の謝安が芸妓を連れて、東山にやってきたところ。縦長の軸だが、上部が遠景、中部が中景、下部が近景という構図が大きい。 《漁樵問答図》は、屈原が漁師と話しているところが、薄墨を主として描いた静かな画で、わたしのお気に入り。 《聖賢図》は、沈南蘋風の画だが、色彩がきつすぎて、あまり気に入らない。 谷文晁の《胡蝶夢図》はありふれたテーマだが、力を抜いたユルキャラ風の画で、なかなか良い。これなら茶掛けにもいいのではないか。落款からみて「烏文晁」は確かなのだが、板橋区立美術館の「谷文晁とその一門」展で見た烏文鳥はもっと黒い墨絵だったような気がする。(ブログ記事はこちら、HP記事はこちら) 谷文晁は、松平定信編「集古十種」85巻中2巻(名物古画、法帖)の画を描いているとのことで、中央のケースに陳列してあった。名物古画は東福寺の仏画《呉道子三幅対》を写したものだった。なかなか上手。 谷文晁の高弟の岡田閑林の《藤雀図・薔薇菊図・水仙叭々鳥図》はなんてことのない三幅対。 こういった江戸南画がお好きな方が、齋田家におられたのだろう。 三十六歌仙絵巻の上の壁面に、館蔵《製茶絵画》があった。おそらく絵巻なのだろう。お茶を生業にしていた齋田家に相応しいもので、パネルの解説が上手なので、十分に理解できた。画家は、狩野甫信。画の最後の署名が「松本隋川甫信」となっていることの説明もあった。 狩野甫信は、木挽町狩野二代常信の三男。兄が浜町狩野を作った時には、将軍から松本姓を賜っていて、江戸狩野のトップの地位にあった。兄が早世して、甫信が浜町狩野二代目となったころ、朝鮮に贈る屏風が狩野でないとまずいということで、松本姓が狩野となり、江戸狩野のトップは木挽町狩野になったのだという。 学芸員の女性に、朝鮮に贈られた屏風をサントリー美術館の展覧会で見たと話したら、羨ましがられた。(サントリー美術館の「BIOMBO展」のブログ記事はこちら) 会場入り口に床の間がしつらえてあり、軸は北斎の弟子の蹄斉北馬の肉筆画《桜花図》、香合は二代真清水蔵六の《色備前牡丹蝶香合》で蓋に蝶が乗っていた。 会場は1部屋だけであるが、ゆっくり見たので1時間半かかってしまった。学芸員とちょっとお話ししたが、楽しかった。 余計なことまで書いたが、とにかくこの展覧会・記念館は素晴らしい。7月25日(水)までとのことなので、無理してでもご覧になることを強くお勧めします。 一般に土・日・祝日は休館だが、5月26日、6月23日は開館。 開館時間は10:00-13:00と14:00-16:30(入館は16:00まで)。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2012-05-24 19:52
| 江戸絵画(浮世絵以外)
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