め組の喧嘩 ＠東京国立博物館 本館

　東博の浮世絵室に豊原国周の鮮やかな肉筆浮世絵《め組の喧嘩》が出ていたので、写真を撮ってきた。　Webではそのストーリーの概略は次のようになっている。

　文化2年(1805)の春、芝明神社で開かれていた勧進相撲に、「め組」の鳶職・辰五郎と長次郎、その知人の富士松が無銭見物しようとしたのが発端。芝神明宮界隈は「め組」の管轄であり、辰五郎らは木戸御免を認められていたが、富士松はそうではなかったため、木戸で口論となった。そこへ力士の九竜山が通りかかって、木戸番に味方したので、辰五郎らは一旦引き下がった。

　次に、富士松らが芝居見物をしていると、九竜山が芝居を見に来ていたため、富士松が九竜山に絡んで蹴り付け、完璧に喧嘩になった。しかしここは九竜山たちが引いて一応は収まった。

　しかしその話を九竜山たちから聞いた四ツ車がけしかけたため、力士たちが火消したちを追いかけて、神社境内で３度目のとうとう本格的な大喧嘩が始まった。

　事態に驚いた火消しの長治郎は火の見櫓に昇って半鐘を叩いた。するとそれを聞いて大勢の火消しが集結、話を聞いた力士たちも集まってきて大騒ぎになった。力士の中には抜刀する者もあり多数の怪我人が出て、喧嘩は４時間近くも続いたという。最後には南町奉行所の与力や同心たちまで出動して、全員縛り上げて喧嘩を収めた。張本人の富士松はこの時の怪我がもとで３日後に死亡した。

　この問題の裁きについては、当時の南町奉行の「芝明神の半鐘がかってに鳴り出したのが喧嘩の原因である」という粋な計らいで、この半鐘に遠島を申しつけて、関係者には寛大な処分で済ませた。結局、九竜山・辰五郎・長治郎の３人が江戸払いになっただけで、他は過料とお叱りで済んだ。この遠島にされていた半鐘は明治になってから、お許しが出て芝明神に帰ってきたという。

　この事件は講談や歌舞伎で取り上げられ、人口に膾炙した物語として残っている。

　浮世絵では、この他に、月岡芳年《新撰東錦絵　神明相撲闘争之図》（1886）↓ならびに三代歌川国貞《神明恵和合取組》（1890）↓↓ がある。　
美術散歩　管理人　とら