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1月3日の夜の「4時間番組」。正月の孫たちの来襲が終わってほっとしたところでちょうど良い番組と思って見だしたが、正直最後の方は眠くなってしまった。忘れないうちにメモをアップしておくことにした。
司会は女優の大地真央 、青柳正規、池上英洋両先生の監修 、リポーターが森田美由紀、語りは石澤典夫の豪華版である。 第1部: 古代ローマ・中世 まずは中世の話から。実際にイタリアで見たものが多いので懐かしかった。 ・ベネチア「サンマルコ大聖堂」: 11世紀後半、外には5つのドーム、中には天井の黄金のモザイク画、金の壁、大天使ミカエルのイコン、パラドーロ(衝立)にふんだんに金が使われている。金は永遠の象徴であり、交易にも役立った。モザイクは、1cm四方の「テッセラ」の集合。これは金箔にガラスを載せて保護したもので、角度を変えて張り付けられた各ピースによって光を乱反射させている。 ・ラベンナの「ガラ・プラシディア廟」は1500年前のもの。「良き羊飼い」や「星空に輝く十字架」だけに金を使用している。同じラベンナの「サン・ヴィターレ聖堂」は1400年前のもの。ここのモザイク画では、皇妃テオドラにも光輪が付けられている↓。金は神からの贈り物とされていた。これを見たクリムトが現在NYのノイエ・ギャラリーにある《アデーレ・ブロホバッハー》やオーストリア絵画館の《接吻》などの金を多用した官能的な画を描いた。このように金は祈りの象徴であるのみならずエロスの象徴でもある。 ![]() ここで話は古代ローマに逆戻り。 ・古代ローマの遺跡フォロ・ロマーノからは沢山の金の美術品が出てきている。カピトリーニ美術館蔵の《ヘラクレス像》には金箔が使われており↓、《マルクス・アウレリウス像》は青銅に金メッキを施したものである。巨大な黄金の《女神の足》も出土しているが、これは金メッキと金箔の両者が使われている。この女神は復元すると3メートルにも達するものとなるという。 ![]() ・西暦79年の火山爆発で埋没したポンペイ遺跡からは、《蛇型の腕輪》や《耳飾り》といった黄金の装身具が多数出土している。 ○ここで監修の青柳正規氏登場。トツトツとした口調である。エジプトでもツタンカーメンのマスクのように金が使われていたが、その使用は上流階級に限られていたとのこと。これに反し、ローマでは奴隷さえも金の装飾品を所有するほど、金が広く行き渡っていたとの話をされた。以前わたしが見た「エトルリアの世界展」にも金の装身具がかなり出展されていたが、それとの関連には触れられなかった。 ・5代皇帝ネロの黄金宮殿は、現在のコロッセオの場所に作られていたが、そこには35メートルに及ぶ金のネロ像があったという。これは奈良の大仏の2倍以上の大きさである。 ・14代皇帝のハドリアヌスは、パンテオンを黄金の公共施設として、市民に開放した。大きな金のドームがあったとのことである。 第2部: ルネサンス ・フィレンツェ《サン・ジョバンニ礼拝堂》: 有名な金の「天国の門」の制作については、ギベルティとブルネレスキの争いになったが、現在パルジェッロ美術館に保管されている両者の《イサクの犠牲》によって判定され、ギベルティが作ることに決定した。 ○ここでもう一人の監修者の池上英洋氏登場。こちらは弁舌さわやか。 ・まず「コジモ・デ・メディチが作ったフィオリーノ金貨がルネサンスを支えた」という話を一くさり。とくに「宮廷料理では金を食べていた」というショッキングな発言。ここで 彌勒忠史氏が当時の料理人に扮して登場。「うなぎパイの金箔包み」などの金料理を提供。錬金術まで出てきたのは金に不老不死の力があると考えられていたからで、金を食べたのはその流れによるとの説明に納得。 ・ヴェッキオ橋に今も金細工店が30以上並んでいる。当時金細工は芸術とみなされていたとのこと。ここで、ウィーン美術史美術館の金の塩入れ《サリエラ》の写真が出てくる。ベンベヌート・チェッリーニがフランソワ1世のために、金貨1000枚を溶かして製作したもので、豪華絢爛とはこのことだろう。 ![]() ![]() ・ウフィッツイのマルティーニ《受胎告知》は金ぴかで永遠の天国でのできごとを表しているが、サン・マルコ修道院のフラ・アンジェリコの《受胎告知》になると金の使用量が減り、ウフィッツイのダ・ヴィンチ《受胎告知》には金はほとんど使われていない。光輪も神聖なものとしては取り扱われておらず、百合におしべを描くなど実景に近づいた画となっている。 ![]() ・システィーナのミケランジェロの《最後の審判》のキリストにも光輪が付いていない。ラファエロの《サンシストの聖母》にも光輪はないが、バチカンの署名の間の《アダムとイブ》には金がしっかりと使われている。ラファエロのチャッカリしたところが見て取れる。 第3部: バロック: ・1517年の宗教改革によってピンチに陥ったカトリックは過剰な装飾と劇的な表現を伴う黄金の芸術で信者を取り戻そうとした。これはイメージを必要としないとするプロテスタントに対抗するものだった。 ・その典型がサンタ・マリア・ビラ・ヴィットリアにあるジャン・ロレンツォ・ベルニーニの《聖テレサの法悦》である。黄金の矢のような光線は神の光の象徴である。このベルニーニはボルゲーゼ美術館蔵の《プロセルピナの略奪》の食い込むような手を表現した彫刻でも有名だが、サン・ピエトロ広場の列柱廊や「四大河の泉」などによって、ローマを劇場空間に変えてしまった。教皇ウルバヌス8世の知遇を得たベルニーニは、金を多用したサン・ピエトロ大聖堂に《バッキダーノ》という10階建てビルに相当する高い天蓋やローマ教皇の権威の象徴としての《聖ペテロの司教座》を作り、「金=権威」という概念を確立した。 ![]() ○ここでソプラニスタの岡本知高が登場し、バロックの教会内でカストラータ並みの美声を聞かせてくれた。女性歌手が教会内で歌うことがなかった当時、カストラータの高い声は信徒をカトリック教会に呼び寄せるためのものであった。 ○ここで池上先生が再び登場し、教会の分裂にともなうカトリック信者の減少と大航海時代の出現という二つの事象が重なって、世界的な布教が始まったのであるとの説明があった。スペインの「サン・エステバン聖堂」の黄金の祭壇に見られる過剰なまでの装飾←やメキシコのオアハカの黄金で飾られた「サント・ドミンゴ教会」→などはその代表例である。 ![]() ![]() ・ここで話変わってカラバッジョ。この画家は、「黄色を画中に描ききる」ともいわれるそうだが、《聖マタイの召命》↓にみられるようなスポットライトのような闇を切り裂く強烈な光を特徴としている。この光は「黄金の荘厳さを持ち合わせた光」ともいわれている。ストラーロの近作の映画「カラバッジョ」が紹介された。サン・ピエトロから撤去された蛇と露な乳房の描かれた画や自画像ともいわれる《ゴリアテ》の画像も出てきた。どうしてNHKが映画のDVDのPRをするようになったのだろうか。 ![]() ○次に登場したのは、黄金の3Dアートといわれるローマのイエスズ会総本山「イル・ジェズ聖堂」に描かれたジョバンニ・バッッティスタ・ガウリの天井画《イエスの御名の勝利》↓。彫刻との組み合わせ、天井に雲を描き、窓からの光が金色に輝く超絶技巧によってイリュージョンの視覚効果を観る者に与える。その傍にある地味な《ロヨラの祭壇画》は、下がってゆき、その背面に輝くロヨラの像が現れるサプライズ。 ![]() ・テッセラを応用した現代のモザイク抽象画がでてきた。なんといっても歴史を土台にした重みがある。 ・最後に、最近のイタリアの貴金属装身具の紹介となった。カッツァニーガの作品はセレブに大受けとのことである。しかし、この販売会社のウェブサイトを見ると、公共放送のNHKがこのようなPRに加担することは倫理規定に反しているのではないかとの疑念も出てくるだろう。 ・4時間にわたる長大な番組だったが、各章ごとにあらかじめ概略紹介を行った後、それぞれについて詳しく説明をしていくという重複した構成を見直し、金や光という本題からはずれた画家の逸話などを省けばもっとスッキリとした番組となったであろう。 ・良かった点はフィレンツェやロンドンの専門家の落ち着いた説明が聞かれたことと黄金芸術のイタリア編をまとめて見られたことである。仏像などの東洋美術における黄金芸術との関係についても考えさせられる点があった。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2011-01-05 11:30
| 国外アート
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