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「開館記念特別展Ⅴ」で、「広重《東海道五拾三次》一挙公開」が副題の展覧会。山種美術館には状態の良い浮世絵があることは知られているが、なにせ総数が100点ぐらいなので、包括的な浮世絵展を開催することはちょっと苦しいだろうと思っていた。今回は、あまり期待せずに山種に行ってきた。
![]() 1.広重《東海道五拾三次 保永堂版》: 扉があるところから、これはシリーズが完成した後、画帖にまとめられていたものが別々にされ、これらがまとまって山種に入ったというような都合の良い説明がキャプションに書かれていた。しかし大久保氏は、4年がかりで完成したこのシリーズの初摺など早期の摺りが4年後に作られた画帖に入っていることは説明困難であるとして、上記の説明に疑問を投げかけておられる。 ![]() 《品川・日の出》: 左の船の帆柱の間に太陽が見える数少ない摺り。 《保土ヶ谷・新町橋》: 樹の梢や屋根の上部に「ぼかし」が見られる早期の摺り。 《戸塚・本町街道》: 武士が馬から飛び下りている早期の摺り。 《蒲原・夜之雪》: 「天ぼかし」の初摺。 《府中・安部川》: 山を薄墨と茶で重ね摺りした早期の摺り。 《丸子・名物茶店》: 早期は「丸子」、後期では「鞠子」とされるので、これは早期の摺り。 《見付・天竜川図》: 「無駄摺」の線が見られる早期のもの。この線は、色版を彫るための目印として墨版に彫られたものだが、色版の版下が摺りあがった後は不要になるので削られるべきものである。 《藤川・棒鼻ノ図》: 土塁のぼかしが「上から下」になっているので、早期の摺り。 《池鯉鮒・首夏馬市》: 「くじら」と呼ばれる山があるので早期の摺り。 《大津・走井茶店》: 遠山が描かれているので早期の摺り。 2.紅絵・漆絵: ・奥村政信《踊り一人立》: 透明感のある色彩。紅の色残りも良い。 ・奥村政信《初代市川門之助の頼光と初代袖崎三輪野の花園姫》: 空摺で模様を浮き出させた上に、膠墨を塗った着衣部分、黄銅粉を蒔いて装飾性を高めた衣装模様が良いとのことだが、正直よく分からなかった。 3.錦絵: ・春信《梅の枝折り》↓: 斜めの塀の構図が面白い。色残り良好。中間色の使用で品が良くなっている。 ![]() ![]() ・清長《当世遊里美人合 橘妓と若衆》↓: スラリとした女と男。紫の色残りが良い。 ![]() ・清長《社頭の見合》: 二枚続き。右では薄藍、左では紫・紅の色残りが良い。 ・歌麿《青楼七小町》↓: 大首絵。毛割(彫)の妙。 ![]() ・写楽《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》↓: 黒雲母の大半が残って、きらきら輝いている。これは型紙で人物を覆い、余白の部分を膠+墨+雲母を刷毛で塗る「置き雲母」。その他に、絵具に雲母を混ぜる「摺り雲母」、膠を塗った画面に篩で雲母をまく「撒き雲母」という技法があるとのこと。ただし最後の技法は明治以降に使われたもの。 ![]() ![]() ・豊国《役者舞台之姿絵 高らいや 三代目市川高麗蔵の千崎弥五郎》・《同 やまとや 初代坂東蓑助の早野勘平》: 仮名手本忠臣蔵五段目。鮮やかな色が残っている。 ・北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》: ここの北斎はこれ一枚。保存の良い作品。 ・広重「近江八景」: 6枚のみ。《三井晩鐘》の手前の色は墨でなく緑となっているので後摺。《唐崎夜雨》では森・水面・空に「拭きぼかし」の技法が使われている。色板面を拭いて水気を与えた後、絵具をはくのである。 ・広重《木曾海道六拾九次之内 洗馬》: 保存状態良し。 ・広重「雪月花」: 3枚揃っていた。良好。 ・広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》: 良好。 4.[参考展示] 近代絵画: 第二展示室。浮世絵の伝統を引き継いだ美人画が7点出ていた。 作者は、菱田春草、上村松園、伊東深水、小早川清、そして片岡球子である。一番迫力があったのは、球子の《北斎の娘おゑい》(画像はこちらで)。目が吊り上り、長い煙管を持っている。そして着物は金地に花模様のド派手なものである。球子とおゑいの相似性に惹かれた。 5.まとめ: 壁に掛けられた浮世絵は近くで細かく見られるが、陳列棚に横置きになったものは距離があるので仔細に見るには双眼鏡が必須である。そのようにしてみると、見慣れた「東海道五拾参次」にも沢山の小さな発見があり、結構楽しめた。 しかし全体的には力不足の浮世絵展で、「浮世絵入門」という名前をつけざるを得なかった理由が良く分かった。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2010-06-16 20:22
| 浮世絵
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