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中国ではいろいろな形の団扇が古くから絵画の中に描きこまれている。当時の団扇の表面・裏面に書画が描かれていたとしても、それは美術品ではなく、あくまで実用的な工芸品だったと考えられる。そのような団扇は「書画扇」と呼ばれている。
これに対し美術作品として団扇形に描かれた画は「団扇画」と呼ばれ、宋時代にその完成を見ている。2009年に故宮美術院を再訪した際に見た《宋元集絵冊》などはその集大成なのだろう。 一方、折りたたむことのできる扇子の起源は、平安時代に宮中で使われた記録用の木簡(薄い檜板)をとじ合わせたもの。この檜扇は公家の正装時の必須アイテムとなり、紙が普及し始めた平安中期、5本の扇骨の片面だけに紙を張った夏用の紙扇が考案された。 この扇子(折扇)は10世紀ごろ、日本から宋に伝わり、「倭扇」として珍重された。このことは蘇轍が詩に書いている。こういう日本からの文物の輸入は当時の中国にとって珍しいことだったのではなかろうか。 中国では、この畳める扇が団扇と同じ両面張りに進化していった。そして宋代の「団扇画」は元代には衰退し、明代にはこれに代わって「扇面画」が盛んになった。 この両面張りの扇子が明から日本に逆輸入されてきて、わが国でも室町時代に「扇面画」が全盛をきわめたのである。 今回の展覧会には、中国美術館所蔵の明末から現代までの「扇面画」(一部は「団扇画」)が約100点展観されている。全体的には画と書の両者が見られるものが多く、また時代が下がるにつれて扇面のサイズが大きくなる傾向があった。 明代のものとしては、文伯仁《平湖泛舟》と藍瑛《倣宋人山水》の2点が出ていた。両方とも高価な金箋に描かれた山水画。前者は呉派を代表する文人、後者は淅派の画家である。 清代のもの15点の中でのお気に入りは、 ・蘇六朋《琊瑯会琴図》: 大勢の男性が琴を背負って歩いていく。軽やかな画。 ・居巣《芙蓉胡蝶》・《草虫》↓: 色彩の美しい花鳥画。 ・黄賓虹《山水》↓: 構図も良いが、なんといっても墨の濃淡が印象的。 ・楊啓興《漓江春満》: 山肌の緑が素晴らしい。 ・楊之光《洛神》: 幻想的な男女の神々。 ・范保文《千谷争峰》・《図画江山》: 前者は構図、後者は色彩に優れ、両者ともに凄い迫力。 ・陳家泠《百子図》: これは色彩豊かな現代絵画。 ・謝志高《龍女》: 女性の周りを飛ぶ龍。 ・宋玉麟《秋江》: 水の網目表現が面白い。 ・劉慶和《夏》: 最後にヌードが4点出てきた。これはその一つ。 19世紀末の欧州を席巻したジャポニズムの一つに「扇面画」があり、ピサロやゴーギャンも「扇面画」を描いているが、10世紀に海を越えた日本の「扇面画」が中国の地に根付き、21世紀の現在、日本に里帰りしていることはまことに面白い。優れた文化は時間と空間を超えて交流していくという良い見本である。 「橋本コレクション」: この美術館に寄託されている故橋本末吉氏の中国絵画コレクションは800点にも達するとのことだが、今回は故桑名鉄城氏のコレクションを引き継いだもののうち、9点の大作が展示されていた。お気に入りは、 ・石鋭《探花図》(重文): 巻物であるが、開かれている部分の画では、驚くほど繊細な筆致で山、川、海、人、楼閣などを描きわけられ、その後に詩が記されている。 ・章谷《峨嵋飛雪図》: 九十九折の桟道を馬で登る旅人。面白い構図である。 ・沈銓《雪梅群兎図》: 南蘋派の本人が来日前に描いた画。 ・李士達《騎驢尋梅図》: 輝く金箋に描かれた扇面図。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2010-06-09 20:09
| 東洋アート
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