伊藤若冲 アナザーワールド（その１．黒と白） ＠千葉市美術館

　若冲の水墨画を中心に、関連する着色の作品、若冲以前の黄檗絵画の展覧会。初日に行って来たが、観客はまだそれほど多くない。　章立ては、１．若冲前史、２．初期作ー模索の時代、３．着色画、４．晩年期ー多様なる展開。前期・後期あわせて165点という多数の展示である。

　初見のもの、再会したものをそれぞれ楽しんだが、記事にしだすときりがない。ここでは今回のサブタイトルのアナザーワールドにちなんだ記事にとどめる。

・《乗興舟》↓：　今回のチラシともなっている木版画一部は何回か見ているが（１、２）、全体を見たのは今回がはじめてである。大阪までの淀川の川下りの悠々たる風景。版木の上に紙を置いて、表から墨を乗せて形を写し取る正面摺であるから、白黒逆転した拓本のような世界である。実際の版木も展示されていたので、版画と比較しながら見ることができた。・《玄圃瑤華》↓：　木版正面摺の画譜である。これも白黒逆転のアナザーワールド。対象は若冲お得意の動植物。葉っぱに穴があいている。・《花鳥版画》：　木版・合羽刷多色摺版画である。木版画で型紙を使って素晴らしい色彩を乗せている。これも背景が黒であるから、アナザーワールドに属するといってもよいだろう。一枚、実際に団扇に貼り付けられていたもの↓が出ていた。驚くべきものが残っている。同じ図柄で団扇に貼られていないものも出ていたので、両者を比較して楽しめた。・《蓮池図》↓：　有名な《仙人掌群鶏図》（対決展の記事はこちら）の裏面に描かれた襖絵。現在は軸装となっているが、並べて展示されているので、襖絵の雰囲気を味わうことができる。水墨であるが、版画のような印象を受ける。余白が多いことや蓮が次第に萎れていく様子など《仙人掌群鶏図》と対照的な彼岸、アナザーワールドが描かれているともいえる。　水墨画や升目描きも画法としてはアナザーワールドともいえるが、これらについては改めて書きたい（その２はこちら）。以下、お気に入りを列挙してメモとしておく。

1．河村若芝《十八羅漢図》、16．鶴亭《山水図》、25．鸚鵡図、38．柳下馬図、44．寿老人・孔雀・菊図、55．花鳥蔬菜図押絵貼屏風、64．払子図、69．海老図、84．厖児戯箒図、85．狗子図、86．狩野養信《等春筆狗子図模本》、99．出山釈迦図、101．群鶏図障壁画（旧海宝寺障壁画）、104．果蔬涅槃図、105．石灯籠図屏風、107．石灯籠図、111．樹花鳥獣図屏風、119．乗興舟、120．『乗興舟』版木、121．『玄圃瑤華』、122．『素絢石冊』、124．花鳥版画、127．猿蟹図、135．蓮池図、137．石峰寺図、145．花鳥図押絵貼屏風、158．雛に双鶏図、164．群鶏図押絵貼屏風、165．鯉図押絵貼屏風。

美術散歩　管理人　とら