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ストラスブールはアルザス地方の中心都市。現在はフランスに属しているが、いわば歴史に翻弄された街で、しばしばドイツ領となっている。
その中に10もの美術館・博物館があるが、今回はそのうち古典美術館と近現代美術館に収蔵されている風景画が展示されている。↓は初日先着100名限定のポストカードということで有難く頂戴したが、よく見ると、何のことはない、この展覧会の案内葉書にすぎない。しかもチラシと同じ画像。特製クリアファイルを頂けた時代は、「古き良き時代」になってしまった。 「近現代美術館」の内部もこのサイトで分かる。 ストラスブール美術館のコレクションがまとまったかたちで紹介されるのは、日本で初めだとのことだが、古典的な名画もぜひ見たいものだ。 章立ては、対象に従った単純なもの。 1.窓からの風景―風景の原点: 「窓と風景画」という企画者の視点には新鮮さを感じた。15世紀に、窓によって切り取られた屋外の風景が絵画の中に取り込まれるようになり、19世紀になって、窓の存在が作品に広がりと奥行きを与えるようになったとのことである。 ・モーリス・ドニ《内なる光》: 妻マルトと娘が描かれた穏やかな室内画であるが、「その穏やかさと青空とが呼応している」との説明はちょっと無理筋かな。 ・リュク・ヒューベル《後ろを向いてたたずむ女性、窓の前》: 「観客がこの女性の位置に立って窓外を見ることになる」という説明には納得。 ・モーリス・マリノ《室内・縫い物をするエレーヌ》: 野獣派マリノの色彩の鮮やかさが目立ち、窓との関連まで考える余裕はなかった。 2.人物のいる風景―主役は自然か人間か: 17-18世紀の風景画、19世紀のロマン派絵画、バルビゾン派の画、ピカソの画などを並べて、それぞれにおける自然と人間の果たす役割を考えさせている。 ・ギュスターヴ・ブリオン《女性とバラの木》↓: バラの木の世話をしている平穏な女性の姿。ここでは自然と人間が調和しており、どちらかが主役とはいいにくい。とにかく綺麗な画でした。 ・テオフィル・シュレール《1814年の戦いの逸話》: 敵に向かって発砲するアルザスの女はたくましい。主役はあくまで人間。 ・ヴァロットン《水辺で眠る裸婦》: 左手に裸婦が大きく描かれ、男たちの乗るボートは右奥に小さく描かれている。眠れる女性の夢なのだろうか。主役は女性、脇役が男性と風景。 ・リーバーマン《アムステルダムの孤児院の庭》: この印象派の画では、人間は環境の一部に取り込まれている。 ・ルイ=フィリップス・カム《刈入れ》: 大きく描かれた3人の農夫が主役で、背景の小さな虹はあくまで点景。 ・モーリス・マリノ《庭の女性》: キャプションには「ゴーギャン風」となっていたが、この画はどう見ても「マティス風」の色彩の画。どちらが主役でも良いでしょう。 この辺で、久しぶりに初日派の「えりりさん」に遭遇した。ということで、ここからは人間たちが主役となってしまい、脇役となった画たちを一緒に見て回った。 3.都市の風景―都市という自然: 都市の風景画も古くから描かれてきた。絵葉書のような役割を果たした景観画は18世紀に盛んに描かれた。しかし18世紀末に始まった産業革命は、都市の様子を徐々に変貌させ、印象派の画家たちにも新たな題材を与えた。20世紀になると、都市や建築物は、キュビスムの画家たちの格好の材料となった。 ・コロー《オルレアン、窓から眺めたサント=パテルヌの鐘楼》: 若い時代のコローの「セザンヌ風」で、堅牢な作品。小さな猫が書き込まれているのがご愛嬌。 ・ピエール=アントワーヌ・ドマシー《ルーブルとポンヌフの眺め》とユベール・ロベールの《風景》は並んで展示されていたが、どう見ても絵葉書代用の景観画。この両画家がライバルだったというから、滑稽な気がする。 ・テオフィル・シュレール《アルザスのオーベルゼーバハの日曜の午後》: 民族衣装が面白い。 ・アンリ・マルタン《雪化粧のパリ》: 得意の点描。 ・ヴラマンク 《都市の風景》: 単純な立体・制限した色彩というセザンヌを意識した表現でパリ郊外の住宅が描かれている。 4.水辺の風景―崇高なイメージから安らぎへ: 副題の意味は、画の対象としての水の役割が17世紀オランダ海景画、19世紀ロマン派の感情を移入した海景画から、水そのものよりも水面に反射する光に関心を示した印象派への流れを辿ろうとしたということ。 ・印象派の先駆けとなるブーダンの《海景》: ノルマンディーの海岸に立って描いている姿が目に浮かぶ。 ・メスダッハ《海景》: この画がなかなか良かった。画家はロマン主義的写実主義ともいえる作風のオランダ「ハーグ派」の一人であるが、経済的にゆとりのある画家の作品には余裕がある。同時代の貧しいオランダ画家ゴッホと対比するまでもないことだが。 ・コロー《ヴィル・ダヴレーの池》↓: 画家お気に入りのモチーフ。独特の銀灰色の世界が描き出されている。赤のアクセントを持つ人物が添えられる。よく知られていることだが、コローは池や川に取材してはいるが、作品の完成はアトリエで行っていたのである。 ・お気に入りのマルケの《ルアーブルの桟橋》と新印象派シニャックの《アンティーブ、夕暮れ》↓が出ていた。アンティーブといえば、現在ボストン美術館展で展示されているモネの作品が有名であるが、今回はこのシニャックの他に、後述のフランセの作品も出ていた。この地中海を望む南仏の港は人気スポットだったらしい。ここでは午後8時を過ぎてもまだ明るく、夕暮れの光が風景を薔薇色に染めるとのこと。 ・アンリ・ジュベールの《ヴュー=フェレットの羊の群れ》: アルザス地方の広大な田園風景。1883年の作であるが、産業革命の影響はまだ地方には及んでいないのだろう。 ・コローの画がここに2点出ていた。《モルヴァン地方の風景》と《朝の香り》。いずれにも赤の小さなアクセントが認められる。後者は円形画で、「朝の挨拶」の曲が聞こえてきそう。許されるなら「お持ち帰り希望」。 ・シスレー《家のある風景》(チラシ↑に部分画像): シスレーは空を広く描き、水辺の作品が多いと思っていたが、これは丘陵地の風景画。曲線を描く坂道が動きを生み、木立の半円形の輪郭線とあいまって家に視線を集めている。得意の空の描写はここでも健在。 ・クロード・モネ《ひなげしの咲く麦畑》↓: これが今回の目玉作品なのだろう。一日の時間帯を変えて描いた5点の連作の一つ。ジヴェルニーでは雑草とされていたひなげしもこのように描かれると見事なお花畑。それに加えて、空のピンクがなんともいえず美しい。 ・アントワーヌ・シャントルイユ《太陽が朝露を飲み干す》: コローの弟子。縦長の大作で、鹿も描きこまれている。 ・ナタリア・ゴンチャローヴァ《家禽のいる庭先》: ロシアのネオプリミティズム画家。この画家の作品は青春のロシア・アヴァンギャルド展で見ている。その時も「えりりさん」とお会いしたような気がする。その時の記事はこちら。 6.木のある風景―風景にとって特別な存在: 木は風景画にアクセントを加え、奥行きを強調するとともに画を分割する役割を果たしているが、樹に精神が宿るという考えは日本人だけのものではないようだ。 ・テオドール・ルソー《木の幹の習作》: 伐採された木の幹を克明に写生している。この画家の茶褐色は懐かしい森の樹の色彩である。 ・フランソワ=ルイ・フランセ《アンティーブの眺め》↓: 南仏の港町を丘の上から眺めた風景だが、主役は明らかに樹。高台に立つ巨木の姿は雄雄しい。「この樹なんの樹・・・」という歌が耳に聞こえてくる気がする。遠景のアンティーブ港はモネの画とそっくり。コローに師事したこともあるというフランセがどういう心境でこの画を描いたか知りたいところである。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2010-05-19 12:53
| 印象派
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