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この展覧会は名古屋市美術館で開かれていたのだが、先週名古屋を訪れた時には終了していたものの、特集展示 名古屋市美術館のコレクションのだまし絵」をみることができた。
そのとき気付いたのは「だまし絵」というのは随分と広い概念だということであり、人によってその定義が異なっているということである。 ということでBunkamuraに観にいった。金曜の夕方であるが、結構に混んでいる。 1.トロンプルイユの伝統: ・クエリヌス《慈悲の擬人像》・・・板人形で多少立体感はあるが、この程度のものを「めだまし」というのか? ・17世紀オランダ画家《羊飼いの礼拝のトロンプルイユ》・・・浮彫のだまし絵とのことだが、この程度のものはいくらもありそう。 ・ペレ・ポレル・デル・カソ《非難を逃れて》↓・・・額縁の上に人物の一部をはみ出させ、いかにも画の中から少年が出てくるといった錯覚を与えている。バルトロメウス・ファン・デル・ヘルスト《ある男の肖像》や聖血の画家《ルクレティアの自害》なども額を使ったトリック・アート。 ・ヤーコプ・マーレル《花瓶の花》・・・花瓶の凸面にこの画を描く画家の姿が映っている。 ・ステーンウィンケル《ヴァニタスー画家とその妻の肖像》・・・妻の持つ鏡に画家が映っている。 ・18世紀イタリア画家《死を思え》・・・細密に描かれた板目の上に鋲で画が留められているように見える。エーヴェルト・コリエ《エラスムスの銅版画のあるトロンプルイユ》も同趣向。 ・アドーリアン・ファン・オスターデ《水彩画の上に置かれた透明な紙》・・・これは3枚重ねのように見える。 ・ロラン・ダポ《フランス・スペイン最終和平条約のトロンプルイユ》・・・ナポレオンやカルロス4世の肖像、条約書などの上に割れたガラスがあるように見える。 ・スルバラン《聖顔布》・・・布の縁のめくれが巧い。キリストの顔は抑えた筆致。 ・デル・モーロ《ヴェローナの近くに幻視として現れた聖家族》・・・2枚の画布を使っているように描いている。貼紙もあるように描いている。 ・17世紀フランドル画家《聖家族》・・・板に布を張ったように見せるトロンプルイユ。 ・ヘイスブレヒツ《静物と自画像》と《静物ートロンプルイユ》・・・画布のはがれ、板壁・木枠の細密描写、署名代わりの小さな自画像がトロンプルイユの仕掛け。 ・ヨハン・ゲオルク・ヒンツ《珍品奇物の棚》・・・棚の奥行き感が出ている。エモウ《洋服ブラシとヴァニタスの静物画》や18世紀フランス画家《床屋の戸棚》も同趣向。ヘイツブレヒツ《食器棚》↓は扉が半開きに描かれているところがニクイ。 ヘイスブレヒツ《狩りの獲物のあるトロンプルイユ》もカーテンが仕掛け??? ・ホーホストラーテン《トロンプルイユー静物(状差し)》・・・革の状差しが巧い。状差を使ったトロンプルイユがこのほかに4点も出ていた。ちょっと飽きますね。 2.アメリカン・トロンプルイユ: ・ジョン・フレデリック・ピートの《思い出の品》はレターラック、《画家のポンナップボード》は手紙とカードの重ね合わせ。 ・19世紀アメリカ画家《手提げ籠、セロリと鳥》・・・陰影が巧い。 ・デ・スコット・エヴァンス《インコへのオマージュ》↓・・・背景の板とその前のメモ、そして鳥の手前の割れガラスが仕掛け。 ・ハーネットとポープの《狩の後》・・・木の扉の釘が仕掛け。ハーネットの《海泡石》はサンフランシスコ美術館で観ているが、これも同じ趣向。 ・ジョン・ハバリー《石盤ー覚え書き》・・・石盤がミソ。 3.イメージ詐術(トリック)の古典: ・ドメニコ・ピオラ《ルーベンスの「十字架昇架」のあるアナモルフォーズ》・・・遠近法を利用した歪曲像をその中央に立てた金属円筒に映す。初見。「十字架昇架」の裏側に「絡み合う男女」が描かれているのがご愛嬌。ジャン=フランソワ・ニスロンの『遠近法の不思議』という本に、このアナモルフォーズ作図法が図入りで説明されていた。 ・ジュセッペ・アルチンボルド《ウェルトゥムス(ルドルフ2世)》↓・・・これは今回の目玉。ストックホルム近郊のスコークロステル城から初めて来日したもの。64種類の果物・野菜・花で出来上がった王様のダブルイメージ。アルチンボルド派の《水の寓意》は魚の寄絵。 ・エアハルト・シェーン《判じ絵ーヨナと大きな魚としゃがむ男》↓・・・ホルバインの《大使たち》のドクロとおなじく横から見るとしゃがんで用を足している男が見えてくる。これは実物を見ないと分かりにくいかも・・・。 ・河鍋暁斎《閻魔と地獄太夫》・・・地獄太夫は鏡(浄玻璃鏡)に映っているだけ。 ・呉春・松村景文《柳下幽霊図》・・・表装に柳が描かれている。 ・河鍋暁斎《幽霊図》↓・・・幽霊の頭と足元の鬼火が絵から抜けている。 ・鈴木守一《白衣楊柳観音図》・・・中廻しには経文。下部には蓮が描かれ、その葉には露も見られる。 ・伝 酒井抱一」《蓬莱山・春秋草花図》・・・三幅対。左右の風帯にはよれが描かれ、中廻しには鶴の円紋、天地には竹が描かれている。 ・歌川国芳の寄絵が沢山出ていたが、見たものが多かった。これは西欧のダブルイメージに相当。↓は《としよりのよふな若い人だ》。 ・歌川国芳と広重の影絵が沢山出ていたが、これは宴会芸の表現の「戯画」である。↓は《即興かげぼしつくし つる》 ・マグリットに素晴らしい作品が多かったが、《夢》・《白紙委任状》・《無謀な企て》などマグリット展などで見たものも少なくなかった。《前兆》は山の峯が鳥に変貌してくる。《囚われの美女》↓では、イーゼルの画と風景が連続している。《落日》では割れて落ちたガラスに太陽が・・・。《望遠鏡》では開いた窓に海と空が映っている。 ・エッシャーの作品はスーパー・エッシャー展などで見たものが多いので軽く見るに止めた。 6.多様なイリュージョニズム: ・マルクス・レーツ《変容Ⅱ》・・・前から見ると野兎、横から観ると人物(ソフト帽をかぶったヨーゼフ・ボイス) ・金 昌烈《水滴》・・・技巧の極致。以前にも見たがまたまた感心。 ・マンレイ《だまし卵》・・・trompe-l'oeutとtromp-l'oieの言葉遊びだが、トイレに卵は悪趣味。 ・ライリー《ただよい1》・・・銀色のオプアート。お気に入り。 ・杉本博司《シェイクスピア》・・・蝋人形の写真。 ・本城直季《small planetシリーズ》・・・本物の風景が玩具のように見える。 ・福田繁雄《Sample》・・・正面から観ると天使、側面はSAMPLEという文字。 ・パトリック・ヒューズ《水の都》・・・ブロックに複雑な切込みを入れ、それぞれの面に建物や水が描かれており、その前を横切ると絶えず異なる景色が見えてくる。眩暈がするアート。今回の展覧会のベストの一つである。 ・福田美蘭《壁面5°の拡がり》・・・額縁の左側を少し厚くしてある。画面は途中で白い壁面に吸い込まれてしまっているというロジック。 立派な「だまし絵」展の部分と、むしろ「だまし」絵展というべき部分が混在していた。今日、父の日のお祝いということで小学生の孫たちが遊びに来たが、同級生の間で評判になっているという。小学生向きの展覧会というのが正解かもしれない。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2009-06-20 15:05
| 国外アート
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