大宰府美術散歩ー観世音寺(2)

　観世音寺の講堂（本堂）と鐘楼については、前の記事に書いた。いよいよ観世音寺の宝蔵である。建物自体は、コンクリート製の味気ない建物だが、2階が素晴らしい。階段の脇に、古い絵図があり、この寺の歴史とかっての壮大さを想像することができる。　宝蔵の階段を登りきると、アット驚く。そこには見事な仏像の世界が開けている。すべての仏像が重文である。

　階段を上がったところ、すなわちこの大きな部屋の左側面には、次のホトケサマが並んでおられる。創建当時の天平仏は残っていないが、それを復興させた信仰の力には心うたれる。

１．木造地蔵菩薩立像－旧金堂所在。 平安時代後期。像高1.4メートル。
２．木造兜跋毘沙門天立像－旧金堂所在。10世紀頃。像高1.6メートル。地天の側から顔を覗かす、尼藍婆・毘藍婆の表情が面白い。３．木造地蔵菩薩半跏像－旧金堂所在。平安時代。
４．木造十一面観音立像－旧金堂所在。
５．木造聖観音坐像－旧本堂（講堂）本尊。治暦2年（1066年）の作。　部屋の正面には、5メートルに達する巨大な仏像が３躯聳えている。

６．木造十一面観音立像－旧本堂所在。像高5メートル。延久元年（1069年）の作。７．木造馬頭観音立像－旧本堂所在。像高5メートルを超える平安後期の大作。四面八臂の憤怒の形相。単眼鏡で見ると馬の頭が巧く作られていることがわかる。馬頭観音の前には、2匹の石造狛犬が置かれていた。８．木造不空羂索観音立像－旧本堂所在。像高5.2メートル。三眼八臂で、頭上に十一面をいただいている。奈良時代作の前身像（塑像）が倒壊後、貞応元年（1222年）に復興したもの。解体修理の際、像内から破損した前身像のものと思われる、奈良時代の塑像断片と塑像心木が発見された。　部屋の右側面の奥には、阿弥陀如来を囲んで四天王が並んでいる。

９．木造阿弥陀如来坐像－旧金堂本尊。平安時代後期。 ９．木造持目天立像－旧金堂所在。平安時代後期。像高2.4メートル。
１０．木造増長天立像－旧金堂所在。平安時代後期。像高2.3メートル。
１１．木造広目天立像－旧金堂所在。平安時代後期。像高2.3メートル。
１２．木造多聞天立像－旧金堂所在。平安時代後期。像高2.3メートル。

　部屋の右側面の手前には、十一面観音の脇に大黒天と吉祥天が並んでいる。

１３．木造大黒天立像－旧金堂所在。平安時代後期。憤怒の形相をした古式の大黒天。像高1.7メートル。 １４．木造十一面観音立像－旧本堂所在。像高3メートル。 仁慈3年（1242年）の作。
１５．木造吉祥天立像－旧金堂所在。平安時代後期。像高2.2メートル。　前項で述べたように、この他に２躯の仏像があり、一つは《木造聖観音立像－旧金堂所在》で、現在、本堂に安置されている。本堂で顔以外は拝見できた。もう一つは、《木造阿弥陀如来立像－旧金堂所在》で、ここに来る前に寄託先の九州国立博物館でシッカリと見てきた。

　宝蔵には、旧像断片、舞楽面3面、三戒壇寺（観世音寺、奈良東大寺、下野薬師寺）の甍なども陳列されていた。

　帰りは、西鉄「五条駅」まで歩いた。大宰府の良い美術散歩だった。

美術散歩　管理人　とら