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ルーブル美術館展は何回も見ているが、今回は「17世紀ヨーロッパ絵画」というククリである。この世紀はバロック絵画。伊:カラッチ・カラヴァッジョ、西:ベラスケス、フランドル:ルーベンス・ダイク、蘭:レンブラント・フェルメール・ハルス・ロイスダール、仏:プッサン・ロランといったところがすぐに思い浮かぶが、地理的な範囲が広すぎて散漫な展覧会となる懸念もあると考えていた。
しかし、日頃ブログなどでお世話になっているmerionさんがこの展覧会の初日にオフ会を開かれることを知って、これに参加することにした。 早めに西美に着いてみると、「古典主義時代の変革ー新しい「黄金の世紀」のために」という講演会があることを知った。先着145名で、12時から入場券配布とのことなので、諦め気味にインフォメーション・デスクで尋ねたら、13時30分なのにまだ75番目の入場券を手に入れることができた。早めに出された立派なフライヤーにこの講演会のお知らせが載っていなかったせいなのだろう。ラッキー! 講演会までの30分を利用して、1階の展示(第Ⅰ章と第Ⅱ章)を早足で見てみた。初日なのに結構混んでいるが、観られないほどということはない。ただ小さな画が少なくないので、持参した双眼鏡が大活躍。 チラシ↑のフェルメール《レースを編む女》とレンブラント《縁なし帽を被り、金の鎖を付けた自画像》以外にも、笑いの画家ハルスの《リュートを持つ道化師》↓などお気に入りが沢山ある。 スライドで出ている演題名は、Les Revolution de l'age classique - un nouveau Siecle dor? ・はじめに: 展示はあえて年代順や国別にせず、今回の展覧会へのアプローチを中心に考えて構成した。17世紀は「黄金の世紀」といわれるが、これはこの時期に芸術や科学が頂点に達したこと、すなわち欧州文化が完成したことを意味しているが、さらにこの時期には国王すなわち王制の勝利によってある種の均衡が生れている。 今回展示されている有名作品としては、プッサンの《川から救われるモーゼ》、ベラスケスの《王女マルガリータ》、ルーベンスが消えていく雲の上の愛の幻影を描いた《ユノに欺かれるイクシオン》↓、ダイクが描いたイギリスに亡命中の《プファルツ選定侯の息子たち》などがあげられる。 まず最初に出てきたのは、日本人Kiyoshi Ito教授(1915-2008)の写真↓である。彼は確率計算の祖といわれる数学者であるが、現在における科学の独立性の象徴としてスライドにされたようである。 ・第Ⅰ部 「黄金の世紀」とその陰の領域: 17世紀のヨーロッパの地図を見ると、ドイツという国はなく、イタリアも小国に分かれている。すなわちヨーロッパは細分化されている。 ベイクヘルデの《アムステルダム新市庁舎のあるダム広場》は、経済の飛躍的増大を印象付けており、ボスハールトの《風景の見える石のアーチの中に置かれた花束》↓は、詩情豊な画であるが、お金持ち相手の画で、チューリップ・バブルのメタファーとなっている。 しかしながら画を売るためには、このような現実の影の部分もフィルターをかけて描かれていることに注意しなければならない。ビリャビセンシオの《ムール貝を食べる少年たち》も不快な感じを与えないように配慮され、オスターデの《窓辺の酒飲み》もピエロのように描いて、市場に受け入れられるようにしている。このように、実際の貧富の格差は17世紀絵画でははっきりとは分からないのである。 ・第Ⅱ部 旅行と「科学革命」: ヨーロッパの外への進出は、侵略という形で進められた。ルーベンスの《トロイアを逃れる人々を導くアイアネス》は、ギリシャ神話をもとにしており、トロイアの火事から、船で逃れようとしている人々を描いている。この画はローマで制作されたもので、地中海的な作品である。しかし、デ・ウィッテの世界地図↓をみると、ヨーロッパを中心に描かず、これから征服すべきところが沢山残っていることを示している。 エキゾチズムという観点からは、オランダ人ポストの《ブラジル、パライーバ川沿いの住居》は、初めて新大陸が描かれた絵画であり、エーフェルディンゲンの《山岳地帯の川、スカンジナヴィアの景観》は、山のない国で育ったこの画家のスウェーデンという比較的近い地域に対するエキゾチズム的感情が底辺にあると捉えることができる。 作品自体が旅をする例としては、ベラスケスの《王女マルガリータの肖像》↓が挙げられる。これはフランス宮廷からスペインに注文されたものである。 一方、バクハイセンの《アムステルダム港》は、国家権力が支配した港を描いており、ロランが描いた情感豊なな港の景色の対極をなすものである。 コールテの《5つの貝殻》は、南洋から持ち帰った貝殻を写実的に描いており、フランドルのピーテル・ブールの描いた《一瘤ラクダの習作》も珍しい動物であるが、実際、動物園ができたのはルイ14世の時代だったのである。 モーラの《弓を持つ東方の戦士(バルバリア海賊)》↓は、オスマン帝国の兵士であるが、この時代に「千夜一夜物語」や「コーラン」の翻訳がなされており、言語学的にもヨーロッパの多様性が確立されつつあった。 フォッスの《プロセルピーナの掠奪》では、友人がひきとめようとしているにもかかわらず、戦車に乗せられたプロセルピーナが地球の割れ目に連れ去られようとしている。 ドロストの《パテシバ》には紙が描かれているが、BC1000年には紙がないので、ほんとうは粘土板に楔形文字とするべきところである。したがって、これは聖書の物語を解釈して描いたものである。ヨルダーンスの《4人の福音書記者》↓には、マタイ・マルlコ・ルカ・ヨハネが覗きこんでいる本が描かれているが、これもその時代には存在していないものである。 ライスダールの《嵐》には、大航海に必要だった海洋地理学とこの世における人類の位置づけを意識させる精神性の二面を有している。 ヤン・ブリューゲルの《火》は錬金術を描いているが、ニュートンが錬金術師であったことを考えると、科学と知識の分割法が現在のものとは違うことに注意しなければならない。 「現在、二つの文化は対話していない」というのは、イギリス人物理学者兼小説家であるスライド↓のPercy Lord Charles Percy Snow(1905-1980)の言葉である。17世紀においては、芸術と科学という二つの文化は対立していなかった。この展覧会では、芸術と科学の対話を描いた作品を積極的に選んで展示したのである。 第Ⅲ章のお気に入りとしては、キリストの指が透けて見えるジョルジュ・ド・ラトゥールの《大工ヨセフ》↓、そしてカルロ・ドルチの《受胎告知 天使》と《受胎告知 聖母》↓↓は外せない。 グェルチーノの《ペテロの涙》↓がオオトリとなっていた。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2009-03-01 13:03
| バロック
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