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今回は、前回使えなかったAR(拡張現実、オーギュメンテッド・リアリティ)を使用できたので、以下にそれに沿ったご案内を・・・。 まずスタート地点に立つ。大きくて、ひどく重い携帯端末を首に掛ける。この前面にはレンズが付いていて、背面の画面でその画像を見ることができる。この端末は電磁波を感知し、説明を骨導イヤフォーンで伝えるという従来からの機能も兼ね備えている。 1.展示室での絵画鑑賞: 正面にファン・ホーホストラーテン《部屋履き》が一枚、淋しそうに掛っている。この画は、1993年に横浜美術館で開かれた「ルーヴル美術館200年展」で初めて観た。その後パリでも見たので、今回は3回目。 これは、オランダの黄金時代である1650年代または1660年代初めに、ドルトレヒトにおいて制作した風俗画である。この画には、人物が一人も描かれていない。しかし何となく人のいる気配がする。一体どういう情景なのかが気になる。 いくつもの部屋が描かれている。一番手前は左手の大きな戸を開いて入った空間。床は赤と黒の菱形模様。次の間とのあいだの壁には、大きな布が掛っており、長い箒が立てかけられている。壁の下部にはデルフトタイルの装飾。光は右手から差してきている。 次の空間の床は赤い長方形。楕円形の藁のマットの上には、サンダルのようなものが乱暴に脱ぎ捨ててある。ここには強い光が右手から射してくる。 奥の部屋の入口の扉は室内に向かって開かれており、鍵束のなかの一本の鍵がこの扉に差したままになっている。床は黒と白の菱形。向こうの壁がやけに明るい。そこには画中画、椅子、鏡。黄色のテーブルクロスをかけたテーブルにはローソクをのせた燭台と本が置かれている。本の向こうの黒いものは何だろうか。 画中画にこの画のテーマが隠されているようである。後ろを向いた女性は銀色のドレスを身に付け、女中が待機している。その向こうには赤い天蓋つきのベッド。天蓋の一部は開いているが、その中の様子は分からない。ベッドの手前には同じ色の椅子があるが、その上には何も載っていない。 このようなベッドのある画としては、先日のフェルメール展に出ていたデ・ヴィッテの《ヴァージナルを弾く女のいる室内》が思い出された。その画では天蓋付きベッドの中に男性の姿が描かれていた。 展示室を出て、ガイド・バーコード②および③に導かれて、シアターに入った。 そこでは17世紀オランダの政治情勢、経済状態、宗教の問題、当時の絵画、風俗画の説明などが大画面の高解像度の映像で示されていた。しかし内容はきわめて初歩的であり、多くの人にとってはまったくの時間の無駄である。ハードが良くてもソフトがダメなら失格。 3.絵の中に入る: この部屋に入るのに、ガイド・バーコードのお世話になったような気がしない。さだめし見逃していたのだろう。 ここでは、自分が前に出て画面に近づくと、画面が変化して、その位置から室内を見たようになり、後ろに戻ると画も戻ってくる。そして面白いのは、両脇にあるはずの、空間の存在を窓などで具体的に示してくる。観客の立つ位置が電磁的に認識され、それによって何段階かに変換した画像を見せるようになっているのだろう。 4.画家の技術を体験する: ガイド・バーコード④にしたがって、ディスプレイ付きの机の前に腰をかけた。ここは、画家の技術の一部を体感できるとても面白い場所である。実際には、光と影、空間構成、視線の動きなどについて、タッチパネルを操作しながら詳しい説明を聞くことができる。途中で、カメラを操作して撮影するようになっていたが、これは自由な画面の撮影ではなく、あらかじめ設定されている画像のどれを選択するかという情報を磁気カードに落とし込んでいくだけのもののようであった。カメラ・マークが付いていたが、これは操作する者が実際に写真撮影しているという錯覚を起こさせるためのものなのだろう。 わたしの落とした画像は3枚。遠近法の消失線↓。 光と影の説明図↓ 視線の動きの図↓ この作品は、フランス美術館修復研究所で赤外線、紫外線、X線といった光学的調査を受けている。それによって、鍵や奥の部屋のタイルが描かれた絵の具の層の下に、構図を描いた筆の跡があること、作品のサイズが変えられていたこと、一時期、カンヴァスが折り曲げられていたことが判明したとのことである。この作品が少女や犬などの加筆がなされたことは以前から知られていたが、所々、他の部分に比べてニスがくすんでいることから、描き加えられた要素が取り除かれたことが確認されたということであった。 5.作品の意味を考える: 今度はガイド・バーコード⑤に従ってというよりは、そのすぐそばにある小部屋に入った。ここでは、小さな画面から画中に描かれたものを選んで、その意味の説明を大きな画面と端末の音声で受けるのである。 鍵は、「忠節」の擬人の持物であり、構図の中心の鍵は、道徳的観念に関連付けられている。 部屋履きは女性用の木靴で、脱ぎ捨てられた靴は、女性が家事を投げ出して、たわいのない事や、あまり道徳的とはいえない行為に気を取られていることを暗示している。 本は、書名も内容も不明とのこと。 鏡は、豊かな中流階層の室内を装飾する品物であるが、画中の鏡は空間や遠近法、さらには視覚効果を表現する役割も担っているとの説明だったが良く分からなかった。 箒は、家庭の清潔さを象徴し、理想化された、女性の徳という観念と結びついているが、この画では箒は部屋の陰になったところに打ち棄てられている。 消えたろうそくは、虚栄の象徴で、空虚あるいは不道徳な行為を戒めたもの。 画中画は、テル・ボルフの作品の改作であるカスパル・ネッチェルの絵を再現しているものとのことである。テル・ボルフの《父の訓戒》↓は、タイトルとは違って、左から売春婦、遣り手女、客を描いており、売春婦の後姿はホーホストラーテンの画中画の女とソックリであり、人物の後には天蓋付きの赤いベッドも見える。端末の説明では「恋愛の暗示、男女の愛の語らい、あるいは売春の仲介人の登場するシーンなどを意味している」とのことであるが、これが売春の仲介の場面であることは明らかである。 6.上塗り修正:この作品には、犬を、次には少女を、最後にはデ・ホーホの署名や制作年まで描き加えられたとのこと。少女、制作年、そしてデ・ホーホのイニシャルは19世紀末に消され、犬は、1932-33年にこの作品がルーヴルのコレクションに加えられた際に消されたという説明だった。 7.画家と出会う: ガイド・バーコード⑥に従って、最後の小部屋へ。そこには、ホーホストラーテンの遠近箱、騙し画、著書の実物と観客が操作できるディスプレイが並んでいた。後で聞くと、ガイド・バーコードは9ヶ所に設置されていたとのことである。観客がどの程度発見するかをテストするため、あらかじめ教えておかないとのことらしい。無断でモルモットにされているようである。 この小部屋を出ると、端末が電磁波に反応したらしく、自然に「画家と出会う」の大きな画面の前の椅子に座ることになる。2時間もたっているので坐ってもよい頃である。 ホーホストラーテンはドルトレヒト生れ。父親は金銀細工師で画家。父親から絵の手ほどきを受けた後、15歳頃にアムステルダムのレンブラントの下で修行を受けた。当時の兄弟弟子にはファブリティウスやボルがいた。数年後ドルトレヒトへ戻ったが、その後ウィーンの宮廷画家となった。いったんドルトレヒトへ戻ったが、その後ロンドンの宮廷画家になった。 晩年、彼は絵画理論に関する大著、「絵画芸術の高等画派入門」をまとめ、遠近法、作画法、空間の表現法について詳述した。だまし絵や遠近箱の制作、物の配置や形の描写、物の周りにただよう空気感などに関する綿密な研究を通じて、彼自身がレンブラントを超えた新しい芸術の創始者となったのである。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2008-12-23 11:52
| バロック
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