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そこで、今回の展覧会もパスしようと思っていたのだが、観客数が多いと聞いたので、展覧会の最終週に覗きに行ってきた。 折角見に行くのだから、「人間存在の根本にある不安を描き出したもの」といわれているベーコンの作品が、「叫び」を描いたムンクに近い存在なのか否かということも知りたいとも思って出かけた。 以下は、章別の感想。 1.移りゆく身体 1940s-1950s: まずは、亡霊のような身体が登場する。 《人物像習作》↓: 鮮やかなオレンジ色を背景にして、大きく口を開けた青白い異相の人間が描かれている。右上の傘が、右下の草とともにその顔面あるいは仮面を覆い隠し、不穏な雰囲気を醸し出している。 ベーコンは、ベラスケスの《インノケンティウス10世の肖像》に基づく作品を1950年以来制作している。 ↓の画においては、神の代理である教皇が弱い人間のように「叫ぶ」姿として描かれている。黄色の玉座に対比される教皇の身体は亡霊のようである。なお、鼻にかかる割れた眼鏡は、映画《戦艦ポチョムキン》のオデッサの階段で叫ぶ乳母を参照したものとのことだが、ベーコンは過去の作品からヒントを得ることが少なくなかったようである。 スフィンクスを描いた作品が4点出ていた。↓の《スフィンクスの習作》では、赤色に囲まれてた六角形の結界の中にスフィンクスが坐っている。その体躯は半透明。実に不思議な画で、これを解読することは不可能だし、無意味なことなのだろう。 今回、その中の《Ⅴ》↓と《Ⅵ》を見ることができた。いずれも色彩豊かな作品である。テートで《Ⅳ》を見ているから、都合3点を見たことになる。このような画ばかりだったら、私もベーコンのファンになったかもしれない。その後、ベーコンの画の色彩が明るくなっていくのは、おそらくこのゴッホの画の影響なのだろう。 《ジョージ・ダイアの三習作》↓: ベーコンの同性愛の「恋人・ダイア」は1963年の秋以来のつき合いだったが、1971年、パリでのベーコン大回顧展のオープニング直前にホテルで自殺した。この画が描かれたのは1969年であるから、顔面の弾痕のような穴は自殺とは関係なく、ダイアの自己を傷つける性癖を表しているのだろう。 いくつもの三幅対を中心に構成されたこの章が、展覧会のクライマックスなのだった。 《ジョン・エドワーズの肖像のための三習作》では、大分穏やかな画風に変わってきている。激しいダイアと異なる穏やかな新しい「友人」を得たためなのだろう。 《三幅対》1897年、フランシス・ベーコン・エステート蔵は、闘牛士の追悼詩に関連した画だとのことだが、左大腿動脈からの出血部に赤い大きな矢印が描きこまれていた。ベーコンの異常性の表象である。サディズムは病気ではないのだから治るわけもない。●●は死ななきゃ治らない。 《三幅対》1991年、MOMA蔵↓: 黒の矩形は、高齢となったベーコンの死の予兆とのこと。右パネルの顔はベーコン自身、左はブラジル人のF1ドライバーであるセナあるいはベーコンの新しいスペイン人の「友人」。三幅対でもっとも重要な中央パネルは絡み合った二人の肉塊なのだろうか。 結局、同性愛者ベーコンの異常作品を理解することは、私にとって不可能であることを再認識した。 このベーコン展の観客動員数が多かった理由は、いわく「不可解」! 恐ろしいことに観客は、若年層から老年層まで各層にわたっていた。人間の異常性は伝染していくのかもしれない。 その後に見た近美常設展「新生MOMATコレクション展」は以前とは大分違うエキサイティングな展示となっていて、ちょうど良い「口直し」になった。これについては別報としてアップした。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2013-05-23 23:31
| 現代アート(国外)
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