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今回のナビゲーターはアートディレクターの森本千絵さん。途中で、旧知の国学院大学・池上英洋准教授も登場。
ローマのサンティニャツィオ教会(聖イグナチオ教会)には、大勢の人物が空中に浮かんで見える天井画《聖イグナティウス・デ・ロヨラの栄光》↓がある。これは天井に描かれた精巧な「大だまし絵」で、どこからが建物で、どこからが絵か分からない。17世紀後半の画家アンドレア・ポッツォによるバロック芸術の最高傑作で、「世界初の3D」ともいわれる作品である。 ここで、美術史家ルーカ・バルトロッティ氏が登場し、「スパーダ宮」の廊下↓における「視覚のトリック」を説明された。奥行きが20mくらいに見えるのだが、実際には8.8mしかない。入り口から奥に進むにつれ、柱が短くなっているためだという。こういう目を楽しませるのがバロックの特徴とのことである。 ここで、天井画《聖イグナティウス・デ・ロヨラの栄光》の話にもどる。 第1は「消える天井の謎」である。 ローマ・ラ・サピネンツァ大学図書館には、この画を描いたアンドレア・ポッツォの図面が残っている。建物の平面図・立面図の他に、この画の説明図もしっかりと描かれている。立面図では、実際の建物の上に、架空の建物が乗っているように見えるのだということが説明された。 番組では、石川武さんによって、CGで再現されたが、すぐには納得できなかった。 次に、フィレンツェのガリレオ博物館のフィリッポ・カメロータ副館長を訪ね、ポッツォが遠近法を使っていたこと、さらに平面以外のところに絵を描く方法を習得していたことが紹介された。 第二は、「描き方の謎」である。ここで池上英洋先生が登場。アンドレア・ポッツォの文章の中に「格子」という言葉と「糸」という言葉があることから、描き方の謎を解いている。 すなわち、アンドレア・ポッツォは下絵を描いて、これを2000~3000の格子で分割し、その格子枠を天井に張り付け、次に格子の内部の絵を描いていった。 格子を天井に張り付けるには、番組では格子の影を頼りにしていったのだが、当時はこのような強い光源がないので、長い糸を使って天井に格子を写し取ったのである。 「まさに驚嘆すべき人で、どのぐらいの労力を使ったか分からない」というのが池上先生の感想だった。 ここで、話はアンドレア・ポッツォ(1642-1709年)その人に移る。北イタリアのトレント生れ。10歳でイエズス会の寮に入る。1670年には陰影を伴う《受胎告知》を描いている。 彼の描いたモンドヴィの教会の祭壇画《聖フランシスコ・ザビエル》は立体的に見えるが、これは実際には平板に描かれたものである。またローマ・イエズス教会のポッツオの廊下では、天井の梁が飛び出して見えてくる。 ポッツォはこのように「曲線の魔術師であり、ポッツオ自身の信仰心が驚きとともに人々に信仰を届けた」というのが上述のガリレオ博物館副館長の言葉だった。 さて第三は「3Dのように飛び出す謎」である。ここでは慶応大学の小木哲朗先生の説明があった。 建物の柱が画の柱と一続きになっており、「視線の誘導」が生じ、建物の柱の先においても脳内の画像(人物など)は建物の柱の延長線上に生じるが、実際の画像はカマボコの凹面に描かれているので、下から見上げると、描かれた人物が落ちてくるように感じるのだということである。納得! さらに、ローマ国立絵画館の美術史家のミケーレ・ディ・モンティ氏は、ポッツォの子の天井画の彩色下絵を紹介し、赤や青といった鮮やかな色は近くに見え、ぼかした色は遠くに見えるという効果もこの画で使われていると説明された。確かに四大陸の女性は鮮やかな色彩で落ちてきそうなのに対して、中央のボカシの入ったキリストは遠くに見える。 ここで、ナビゲーターの森本さんが「光の方向」という新たな観点を見つけた。上述の彩色下絵によると、東からの光にあわせて明暗がつけられていた。「東方からの光」というのは宗教的な象徴でもある。森本さんは、朝9時に再訪し、このことを確認した。確かに柱や人物に朝の光が当たっているのである。森本さんは、「かってないドラマの舞台を見る場所に招かれたようだった」とまとめられた。 大変良い番組だった。固有名詞はメモ書きなので、あるいは間違いがあるかもしれない。指摘していただければ訂正します。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2012-04-18 23:10
| バロック
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