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はじめに: この展覧会は10月末から開かれていたが、ごく最近になって朝日新聞の美術欄にバーン=ジョーンズの《プシュケを救い出すクピト》の画像とともに紹介され、会期末に近づいてきていることが分かったので、あわてて見に行って来た。チラシの画像↓はバーン=ジョーンズの《花環》で、周囲はウィリアム・モリスの壁紙デザイン《ジャスミン》。
まずは腹ごしらえ。「観音崎京急ホテル」のランチ・バイキング。もちろんネットの割引券をプリントアウトして持参。ランチの中身はご当地名物の三浦野菜や横須賀カレーもあって美味。もちろん海の景色が料理の味わいをアップさせる。ここの駐車場を利用すれば、美術館はすぐ近くなので、駐車料金も節約になる。 1)メディアがスポンサーになっていないため、あまり宣伝されていない。主催・横須賀美術館、後援・ブリティシュ・カウンシルである。こうなると、この展覧会の紹介記事をどのように書くか。力が試される。 1.ラファエル前派同盟結成前夜: ○ウィリアム・ダイス(1806-64): 最初の部屋に入ると、ちょっと古い画家の作品が並んでいる。ウィリアム・ダイスという画家の名前ははじめて知った。このダイスはナザレ派の影響の強い画家。ドイツの「ナザレ派」とは、古い時代の巨匠の作品から自国の美術を再生させようとする「同盟」で、イギリスの「ラファエル前派同盟」の先駆けである。 ダイスの《聖母子》↓は現在イギリス王室が所蔵する作品の習作であるが、確かにルネサンス前期の絵画を髣髴とさせる安定感がある。ドイツ出身のアルバート公がこのスケッチを見て感心し、早速に注文したとのこと。 ○ウィリアム・ベル・スコット(1811-90): ラファエル前派の1世代年長であったスコットの風景画は、ラファエル前派の影響が強く、今回展示されている《水門と湿地のある風景》では、細部が詳細に描かれ、太陽の光が忠実に再現されている。 ○ジョン・ラスキン(1819-1900): ラファエル前派の精神的支柱であったラスキン自身の作品としては、鉛筆と水彩による《ルーアン大聖堂西玄関口》が良かった。ラスキンはこのゴシック建築を特に好んでおり、このルーアン大聖堂は今回一緒に展示されていた素描入り書籍「建築の七燈」の中に入っているという。 ○フォード・マドックス・ブラウン(1821-93): 《トリスタン卿の死》は、「アーサー王の死」に登場するトリスタンとイゾルデの物語の一場面。イゾルデの不本意な結婚相手、コーンウォール公マークの手で命を落とすトリスタンが描かれている。公の剣先に付いた血、トリスタンを抱くイゾルデ、窓から覗く男女や白い犬の驚愕の目つきなどの劇的な描写である。 同じ画家の《牢獄のジャコボ・フォスカリ》↓は、バイロンの詩劇を下敷きにしたもの。ヴェネチアのフォスカリ家とロレダーニ家は仇敵の間柄。フォスカリ家の息子ジャコボは牢獄につながれ、拷問を受け、流罪の判決を受けるが、ヴェネチアを去る前に死んだという。画では、ジャコボの腰と足は鎖で石に繋がれている。妻のマリアがこの牢獄を訪れ、ジャコボを抱擁し、決してジャコボと離れないとささやいている。 1848年に「ラファエル前派同盟」が結成された。創設の中心となった画家は、ミレイ、ロセッティ、ハントであるが、周囲には彼らに共感する多くの画家がいた。 しかし、それぞれの芸術性の違いだけでなく、ミレイがラスキンの妻エフィーを奪ってしまったこと、またロセッティがハントの妻ジェーンを愛したことなどから、互いに散り散りとなっていく。この後に、ロセッティを慕ってその下に集まった芸術家たち、すなわちエドワード・バーン=ジョーンズやウィリアム・モリスらは、美術史上は第2世代のラファエル前派と考えられている。 ○ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-96): 今回は《めざめ》↓1点のみ。唯美主義的な「ファンシー・ピクチャー」である。この画は以前の「ミレイ展」にも来ていた。 ○トーマス・セドン(1821-56): 《ヨシャパテの谷から望むエルサレム》は、テイト・ギャラリーの本画の水彩レプリカ。この旅行の大部分にハントが同行していたという。 ○ウォルター・ハウエル・デヴァレル(1828-54): この画家は、ロセッティからラファエル前派に誘われていたが、26歳で夭折した。今回は《アーデンの森のロザリンドとシーリア》が出展されている。 ○フレデリック・サンズ(1829-1904): ロセッティと交流があった画家。唯美主義的な傾向が強い作品《ベレニケ、エジプト女王》が出ていた。 ○ジョン・ウィリアム・インチボルド(1830-88): おだやかな風景画。 ○アーサー・ヒューズ(1832-1915): ヒューズは美術学校の生徒だった頃からラファエル前派を知っていて、その主要メンバーと会っている。そして《彼は蘇る:最初の復活祭》↓のようなラファエル前派的な作品を残している。 3.第2世代のラファエル前派とアーツ・アンド・クラフツ運動: ラファエル前派同盟結成後8年経った1856年に、バーン=ジョーンズとモリスがロセッティの新弟子となり、ラファエル前派は新時代に入った。 ○エドワード・コリー・バーン=ジョーンズ(1833-98): 今回は随分沢山の作品が展示されている。チラシの《花環》は主題のはっきりしない唯美主義的な作品。 《プシュケを救い出すクピト》↓はお気に入り。開けてはいけない箱を開けてしまったプシュケ。箱から煙が立ち上っている。 モリスは、1861年に、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、マドックス・ブラウン、フィリップ・ウェッブとともに「モリス・マイシャル・フォークナー商会」を結成して、アーツ・アンド・クラフツ運動を主導し、装飾美術に専念した。モリス自身が関わった作品としては、ステンドグラス、タイル、壁紙、掛け布、カーペット、タペストリー、家具、書籍など多数が出展されていた。 ↓は内装用ファブリック《柘榴あるいは果実》。輪切りのところも描かれている。これも「生活と芸術ーアーツ&クラフツ展」で見ているが、何回見ても良い。 ○シメオン・ソロモン(1840-1905): 《バッハの前奏曲》など唯美主義作品が出ていた。 ○アルバート・ジョセフ・ムーア(1841-93): 《アプリコット》や《黄色いマーガレット》のような唯美主義的作品が印象的。 ○マリー・スパルダリ(1844-1927): 美貌のモデルだが、本人も画を描く。《小さな庭の、澄んだ泉の近くで》はなかなか巧い。 ○ウォルター・クレイン(1845-1915): 唯美主義世代の画家。今回6点も出ていた。お気に入りは《ディアナとエンデュミオン》↓。柔らかい表現が素晴らしい。不老不死を願った羊飼いの青年エンディミオンは永遠の眠りを授けられ、女神ディアナが夜毎にこの眠れる羊飼いを抱擁した。ロマン派詩人キーツが叙事詩「エンディミオン」を残している。ディアナのモデルはムーアの女弟子のロバートソン。獰猛そうな犬は、実際に前の週に人に噛み付いたとのこと。草原の花々はいかにもイギリス的である。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2010-12-19 11:38
| 国外アート
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