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国内でポーランドの美術展を見る機会は少ない。私の記憶では、2002年横浜美術館で開かれた「レオナルド・ダ・ヴィンチ《白貂を抱く貴婦人》 チャルトリスキー・コレクション展」(記事はこちら)と2006年に茨城県立美術館で開かれた「栄光のルネサンスから華麗なロココまでーヨハネ・パウロ2世美術館コレクション展」(記事はこちら)以降である。
チャルトリスキー美術館は、1801年にプワーヴィに設立され、1876年にクラクフに移されて現在に至るポーランド最古の美術館である。しかしポーランドの古都クラクフには王宮ヴァヴェル城があり、首都のシンボルであるワルシャワ王宮にも美術品が残っている。さらに、両都市には国立美術館もあり、それぞれ収蔵品を有している。 という次第で八王子に行ってきた。山手通り下に環状高速道路が出来たので、八王子も1時間以内。便利になったものだ。夏休み最終日とあって駐車場は混んでいたが、なんとか滑り込めた。 第1章 珠玉のポーランド王室コレクション-絢爛たる王国の時代 ポーランドの歴史には詳しくないので、最初はちょっとたじろぐが、年表を見ると10世紀後半からポーランド王国が始まっている。シアターで特別映像が放映されているので、まずこれを見るのが全体を理解する援けになるかもしれない。 一番激しいのは1795年のポーランド分割↓と1939年のナチス・ドイツ軍侵攻。前者では、地図からポーランド王国が消失してしまったこと、後者では、ワルシャワ王宮空爆の際、美術学校の学生が危険をおかして描いた建物のスケッチが、戦後の王宮再建に役立てられたこと、その際多額の国民の浄財が集まったことことなどには心打たれた。 彼のタペストリー・コレクションは最も有名である。これは1550-1560年の間にブリュッセルの工房で作成されたものである。全体で約160点あったそうだが、現在でも138点が残っており、今回の展覧会にも4点が展示されている。 ● ≪カルトゥーシュにモノグラムSAのあるグロテスク・タペストリー≫(→右)は クラクフ・ヴァヴェル城所蔵、248×172cmの大きなもので、下絵は16世紀のコルネリス・フロリスとコルネリス・ボスによる。国王のモノグラムの入ったカルトゥ-シュが、オランダのグロテスク様式の装飾を背景に描かれている。籠の両側にはホルンを吹くサチュロス、それを見下ろすターバンを巻いた女性たち、鳥・虫・草花・果物であふれている。 これらのタペストリーは1795年にロシア軍に略奪されて、サンクト・ペテルブルグに運ばれ、その後125年もの間、ロシア皇帝の部屋を飾っていた。 1921年のロシアとのリガ講和条約締結後には一旦ポーランドに戻っていたが、第二次大戦から避難するため、1939年に再びヴァヴェル城から持ち出され、ルーマニア・フランス・イタリアを経てカナダに輸送され、保管された。ヴァヴェル城に戻ったのは1961年1月のことだったという。 王宮のコレクションを拡大した国王としては、ジグムント3世(1632没)、ヴワディスワフ4世(1648没)、ヤン3世ソビエスキ(1696没)、アウグスト2世(1733没)、アウグスト3世(1763没)があげられる。最後の王であるスタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ(1798没)もコレクションを充実させたが、彼の死後にポーランド貴族が購入した数十点以外の作品は、その後、離散してしまった。 ● ドッソ・ドッシ≪ユピテル、メルクリウスと美徳≫ 1523-1524年 この画はカロル・ランツコロンスキー伯爵(1848-1933)が所有しており、1951年よりウィーン美術史美術館が管理していたが、2000年に伯爵の娘カロリーナ・ランツコロンスカ伯爵夫人に戻され、ヴァヴェル城に寄贈された。 ● レンブラント≪額縁の中の少女≫ 1641年 ワルシャワ王宮蔵 この作品はトローニー、つまり当時の服装と関係のない想像上の服装をした架空の人物像である。「レンブラントのモナリザ」と呼ばれているそうだが、モナリザより美人!! 本作には、この時期にレンブラントが試みた「だまし絵」の特徴が見られる。少女の両手は、納まるべき額縁から飛び出して描かれているのである。 1994年、カロル・ランツコロンスカ伯爵夫人(1898-2002)より、貴重なヨーロッパ絵画35点がワルシャワ王宮に寄贈された。そのうち16点はポーランド最後の国王スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ(1732-1798)のコレクションに収められていたもので、この肖像画もその一部である。 ● レンブラント《机の前の学者》 1641年 ● メツー《窓辺で洗濯する女》 17世紀中頃 ワジェンキ博物館蔵 この画は、1774年に、国王スタニスワフ・アウグストが購入したが、1817年に王の子孫が、ロシア皇帝アレキサンドル1世(1777-1825)にワジェンキ宮殿ごと売却した。第一次大戦中にロシアに移されたが、1921年のリガ講和条約締結後ポーランドに取り戻し、ワジェンスキ宮殿に展示した。第二次大戦時に行方不明になっていたが、1993年のサザビーズのオークションで発見され、1994年ヴィクトル・マルコヴィッチが美術館に寄贈し、1995年以降王宮コレクションに加えられている。 ● ベルナルド・ベロット(カナレット)≪ジグムント3世の円柱から見たクラクフ郊外通り≫ 1767-68年 ワルシャワ王宮蔵 国王スタニスワフ・アウグストの依頼で、1767年から1780年の間に、22点のワルシャワ景観画を描き、これらはワルシャワ王宮の「カナレットの間」を覆う羽目板に据えられた。このためこれらは王宮から持ち出されることはなかった。そして第二次大戦後のワルシャワの街の復旧にこれらの画が役立ったという。今回はこのシリーズから5点が出展されていた。 この画はこのシリーズの最初の1枚で、王宮前広場とワルシャワの主要道路であるクラクフ郊外通りの景観画であるが、左手にはクラクフからワルシャワに遷都した国王ジグムント三世の彫像のある円柱が見える。 ● ロムニー《婦人の肖像》 1775-1800頃、ヴァヴェル城 ● エリザベート・ヴィジェ=ルブラン≪ペラギア・サピェハ(旧姓ポトツカ)の肖像≫ 1794年 ワルシャワ王宮蔵 ウィーンへ新婚旅行に出かけた夫人をモデルに描いたもの。バッカスの信者であることを象徴する踊るポーズの女性には、当時流行していた古代風のイタリア民族衣装を着せている。背景にはヴェスヴィオス火山が見える。これは同行の家内のお気に入り。 ● ヨゼフ・ポトツキ制作《花が入ったかごの模様が描かれた絨毯 》 1750-1775年 ワルシャワ王宮蔵(←左) ポーランドでは花かごや花瓶をモティーフにしたカーペットの人気が高く、初めはトルコやペルシャから輸入されていたが、これは国内で作られた羊毛の絨毯。 ● ダニエル・フミェレフスキー《サッシュ》 18世紀末 ヴァヴェル城蔵(→右) サッシュは貴族の服装に欠かせないもので、腰の回りに数回巻きつけて、上に羽織る長い式服を結ぶのに使われた。本展覧会の第2章に出ていたカジミェシュ・ポフヴァルスキー《スタニワフ・パデニの肖像》にもしっかりと描かれていた。銀糸織りの絹織物で、向うが透けて見えるほど薄い。東方趣味的なデザインが特徴的である。 第2章 19世紀ポーランド絵画 この章の出展作は、ワルシャワ国立美術館とクラクフ国立美術館のものが多かった。 ● 自分の趣味に合わない肖像画が多いので、サラリ・・・と行きたいところだが、「ポーランド画家の父」と呼ばれるヤン・マティコ《自画像》1892年↓は見逃せない。壁に立てかけた画、積み重ねた本の上に置かれたパレットと絵筆から画家と分かるようになっている。 ● ヘンリク・シェミラツキ≪泉のほとり≫ 1899年 クラクフ・ヴァヴェル城蔵↓ アカデミズムの絵画である。ローマの典型的な衣裳を着た女性が、頭にギリシャ風の壷をのせて泉のほとりにたたずんでいる。遥か向うの雪をいただいた山の色も美しい。 ● ヘンリク・シェミラツキ《ローマの田園風景(魚釣り)》 1888年頃 ワルシャワ国立美術館蔵↓↓ これも美しいアカデミズム絵画。不幸なポーランド美術の歴史をみてくるとこういった何気ない画に心が休まる。 ● この時代になってもポーランド絵画から独特の暗さが払拭されていないように感じられたが、最後に登場したユゼフ・パンキェヴィッチの《サントロペの波止場》 1909年↓では、作者が「色彩の魔術師」ボナールの友人だけあって目にしみるような西欧の明るさがクラクフに輸入されていた。 コペルニクスでは、肖像(複製)、彫像、天球儀(複製)、コイン、メダル、ショパンでは、胸像、左手の鋳造(以前のチャアルトリスキ・コレクション展で見ている)、直筆文書、メダル、メダル、マリー・キューリーでは、マリー・キューリー博物館からの資料、写真など沢山のものが展示されていた。 図録には、特別附録として、小倉貴久子演奏の「ショパン名曲集」↓がついていたので早速聞いてみた。結構激しい演奏だった。 美術散歩 管理人 とら
by cardiacsurgery
| 2010-09-01 16:33
| 国外アート
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